個室待機

松「T子ちゃんがいた、あとの店は全部個室待機だった?」竹「いや、控室のあるヘルスも二カ所あった。それはそれで楽しい。イヤな女がいるけど、気持ちのいいのもいるから、そういうのとしゃべっているのは楽しいよ。でも、お店ではプライベートの話はしないし、こっちも聞かない。聞くとしても、せいぜい出身地くらい。"実家はどこ?""北海道""へえ"という程度で、それ以上は突っ込まない」前に登場した「フレッシュ・メロン」の満里奈ちゃんもこう言っていた。

「同じ早番のコで、暇なとき、しほちゃんと話しているのは楽しいよ(前項に書いたように、しほちゃんがこの店の指名トップで、彼女もまた暇な時間はフロントに出てくるタイプ。満里奈ちゃんがナンバーツーだから、トップ会談なのである)。でも、どうでもいい話をしているだけ。彼女は人間を観察するのが好きで、"今日はこんな人が道にいた""電車の中でこんな人を見た"とか、そんな話ばっかりで、しほちゃんがどんな生活しているか、どうしてこの仕事をしているか聞いたことないし、これからも聞くことはないと思う。
しほちゃんとは、店の外で会ったこともないし、電話番号も知らない。遅番のコでは、電話で話したり、一緒に買い物に行くのがいるけど、それ以上の付き合いにはなりにくくて、なんとなく、こういう仕事をしていると、深いことを聞いちゃいけない気がする」松「でも、ストレスの発散もあって、控室でしゃべるコはよくしゃべるよね」竹「すでにおわかりのように、アタシも実はよくしゃべる方なんだけどさ。